『わたしが・棄てた・女』


わたしが棄てた女 (講談社文庫)このBlogの左サイドには、いろいろ「お薦め」のサイトやら本、音楽CD、DVDなどの紹介を載せてますが、そのほとんどが私(ゆう)の趣味で出来上がってます(^^;)
中学生の頃から、私はずっと「趣味がオヤジくさい」と周りから言われてきましたが、今こうして自分の薦める一覧を眺めると、確かにそう言われても無理ないか…という感じも・・・・


お薦めしている本の一冊、遠藤周作著の『わたしが・棄てた・女』は、太平洋戦争が終わって3年後の東京を舞台に物語が始まります。 
昭和27〜28年頃の東京には、まだ進駐軍がいて、廃止されていない赤線地帯もあります。
列車で田舎に向かう「買出し」もあいかわらず必要で、進駐軍からの横流れ品とか闇物資が横行。 庶民の楽しみといえば映画かラジオ(一般向けのTV放送はまだ先の話)。 
歌声喫茶」が若者のオシャレな場所として脚光を浴びはじめたのもこの頃です。


私はもちろん!この頃の日本を知りません。 たぶん私の親だって、ろくに覚えてません(笑)


でも、なぜか私には、この頃の東京の様子が、ありありと目の前に浮かぶのです。 
たぶん、この時代を扱った小説や映画が大好きで、集中的に読んだり見たりしてきたからだろうと思いますが、他にも、元禄から中・後期にかけての江戸の町なんかも、かなりリアルに浮かんでくるのは、同じ事情によります(^^)



・・・『わたしが・棄てた・女』に、話を戻しましょう。


この小説は、遠藤周作氏の作品の中では、不思議な存在感を放っています。 
「狐狸庵」と称して書いていた軽いエッセイの語り口に通じる部分もあれば、『海と毒薬』や『沈黙』と同様の深いテーマを同一線上で追求する作品でもあります。


ヒロインのミツは、野暮ったい田舎者で、器量も劣り、教養もまるでない、およそ「魅力的でない」女性です。 
しかし、読み進んでいくうちに、彼女は私の心をつかんで離さなくなっていくのです。 
そして読み終わった時には、「ミツ」は完全にわが心の一画に住み着いて、ときどき日常の何でもないようなときに、ひょっこり顔を出してくるようにまでなりました。 
紹介文にも書きましたが、まさに『わたしが・棄てた・女』は、「私の人生観を変えた本」なのです。


作品中で、ミツは何度も、人は「なぜ苦しむのか」と問い続けます。
遠藤氏は、「きっと意味がある」と登場人物に語らせています。 
そして、物語の最終局面で、遠藤氏なりの一つの結論も出しています。
この「きっと意味がある」に対して、「どう意味があるのか?」を、私はずっと求めてきました。
人は苦しむ。 
そこにはきっと意味がある。 
では、その「意味」とは何なのか?

・・・続きは、また明日書くことにします(^^)


   (文責:ゆう)

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