My Favorite Things


子供の頃に観て以来、私は『サウンド・オヴ・ミュージック』というミュージカル映画が大好きです。
これまで通算しても、いったい何度観たでしょうか。
数え切れないくらい繰り返し観ていますが、なぜか見飽きることのない作品です。
映画というものの魅力の全てが詰まっている、傑作中の傑作だからでしょうね。


さて、その『サウンド・オヴ・ミュージック』で歌われるナンバーの一つに、「私のお気に入り(My Favorite Things)」があります。
雷が鳴る恐ろしい夜、家庭教師のマリアが、子供たちに向かって、「不安になるときは、好きなもののことを考えましょう!」…と歌う曲です。


「好きなもののことを考える」


そうです!
これは、本当の本当に名案です!


私は今、別に不安でもなんでもないけれど、ちょっと仕事が忙しかったり、いささか疲れ気味ではあるので、そんな時はやっぱり、「好きなこと、好きなもの」のことを考えましょう




ではでは・・・というわけで。




なぁーんと、私ときたら、これまで一度もやったことがない、「NHKの朝の連続ドラマを録画して見続ける」…なぁ〜んてことをしてますっ!
我ながら信じられない行動ですよぉー
もともとあまりテレビドラマを見る方ではありませんしねー


今期のNHK連ドラは、タイトルが『純情きらり』。
ピアニストを目指してる女の子が主役の戦前・戦中の物語ですが、そもそもこの原案が、あの太宰治の娘である津島佑子作の『火の山−山猿記』であることが、これまで連ドラになどまるで興味のなかった私に、「見てみようかな」と思わせたきっかけでした。
小説の題の『火の山』というのは「富士山」のことで、舞台は山梨県ですが、なぜかドラマでは「富士山」とは無縁の愛知県に設定が変わっています^^;




それはともかく、このドラマを、わざわざ毎日録画して、夜中に欠かさず再生してる、その私の動機はなんなのか!?


うふふ・・・それはネ、西島秀俊さま見たさですよぉ〜〜〜


西島秀俊は、飄々とした青森出身の画家を演じてるんですが(この画家は津島佑子の父、太宰治がモデルなんだそうですが…)、それがもぉ素敵で素敵で・・
存在感のあるいい俳優さんだなぁ・・と、彼が画面に登場する度に思います。
あの髪の毛のぼーぼーぶりも、津軽弁の口調も、なんともいえない色気を醸し出す最上の演出になっていて、いやぁ〜〜ドキドキしちゃうんですよね〜〜
かくして、今夜もこれから今朝の放送分を、ニヤニヤ、デレデレ、楽しみに見る私なのであります!






ところで、「火の山」の「富士山」と言えば、少し前にある友人から薦められて読んだ、武田百合子の『富士日記』が、久々に出会った名著でした。


武田百合子は、武田泰淳の奥さんです。
武田泰淳といえば昭和を代表する文豪ですが、私にとっては『ひかりごけ』の作者…という程度の認識しかなかったものの、妻によって綴られた、富士山麓の別荘で日常生活を送る泰淳は、実にチャーミングな人柄です。
そして何よりも、百合子さんの文章が素晴らしい!
文章だけじゃなく、百合子さん自身が素晴らしい!


しかし『富士日記』から浮かび上がってくる、昭和30年代から40年代にかけての日本って、なんとバイタリティーに満ち溢れているのでしょうか。
それは同時に、百合子さんの「強さ」「逞しさ」の表れでもありますが、そんな彼女が、いかに夫の泰淳を恋していて、大切に想って暮らしていたかも、しみじみと伝わってきます。
ですから下巻の最後、日記の終わる部分での、病んだ泰淳が百合子さんや娘と交わす会話のあまりの軽妙さには、何年にもわたって彼らと富士の別荘で過ごしてきた(気になっている)私は、胸がつかえ、涙があふれるのを、暫く止められませんでした。




これは最近知ったことなんですが、なんでもわが最愛の作家・小川洋子も、『富士日記』の熱心な愛読者だそうです。
小川さんが、これを好きになるのは、私、よーーーく分かります。
あの人の感性に訴える世界ですもの。




「好きだな」…と感じるものって、連鎖するんでしょうか? ね?^^