ブラームスとクララのこと



昨秋のことです。
フランスの作家フランソワーズ・サガンが亡くなった…というニュースを聞いて、私は、高校生の頃に「ただ背伸びがしたくて読んだ」彼女の小説『ブラームスはお好き (新潮文庫)』を引っ張り出し、あらためて読み返しました。


高校生だった頃の私には、この小説の世界など、実はほとんど理解できず、主人公の青年に対しては「変な男」とすら感じ、ヒロインの結末に取った行動も、単純に「妥当だ」と思っていました。
タイトルの『ブラームスはお好き (新潮文庫)』の作曲家ブラームスも、高校生素人ピアノ弾きの立場としては、「難しいばっかりで、努力した割には映えることが少なく、あまり好きじゃない作曲家」・・・でありました。


ところが、昨秋久々に読んでみたサガンの『ブラームスはお好き (新潮文庫)』が、これがステキなんですよね・・・
「この小説は、こんなに切ない作品だったのか・・・」と、今さらながらしみじみしてしまいました。
やっぱりね〜こんな大人の話は、高校生には無理ってものだったんでしょうね〜
ヒロインの結末の決断が「妥当」だと思うなんて、若いというか、アオいというか、お子ちゃま感覚だったんだなぁ〜私・・・


・・・そこで、ピアノの生徒としては「難しい→苦手→嫌い」だったブラームスにも、再度のアタックを試みてみたわけです。


そうしたら、嵌ってしまったんですよね・・・
ブラームスに・・・
あぁ〜ブラームスって、本当になんてなんてステキな作曲家なんでしょうか!




ブラームスは、自分よりも14歳年上のクララ・シューマン*1に、ずっと恋をしていて、それは最後までプラトニックな関係であったにしても、クララが亡くなったことで大きな精神的支柱を失った彼は、翌年、まるで後追うかのように自分も病気で他界しました。


子供の頃から、とても内気な性格だった上に、ひどく完全主義者だったブラームスは、若い頃の作品のほとんどを、自己批判から自分で破棄してしまってるんですが、シューマンと出会い、妻のクララとの親交が出来てからは、全ての作品をまずクララに見せて、彼女が「いい曲」と言ってくれると安心して出版できたようなんです。
そして、シューマンが亡くなってからは、ピアノ演奏によって生計を立て7人の子供を養育するクララを、終生サポートし続けました。
信頼してたんですね・・・愛してたんですね・・・誰よりも、彼女を。


これは、私の勝手なロマンチックな想像ですけども・・・ブラームスとクララは、きっと今頃は霊界で一緒に暮らしてますね!
「じゃあ、夫のシューマンはどうなるの?」という声もあるでしょうが、私の独断と偏見で言わしてもらえば、クララを本当に愛していたのは、どう考えてもシューマンよりブラームスの方です。
シューマンは、クララを病的に熱愛していたけれども、なんというか「実は強烈な自己愛」だったわけで、私なら、こういう男性はちょっと・・・
まぁ、純粋に音楽的には、シューマンの「自己愛」に満ちたサウンドって、かなり好きなんですけれども・・・(^^;)


ブラームス交響曲第1番第1楽章、これはクララに捧げられた曲だそうで・・・
こんなのを毎日聴いてると(・・・って、私はなんとこのところ毎日聴いてるわけですが^^;;)、ほんとに頭がクラクラクララ…してきます・・・


    (文責:ゆう)

ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番

*1:作曲家ロベルト・シューマンの妻。彼のピアノの師ヴィークの愛娘で、当時超一級のピアニストでもあった。ヴィークは娘とシューマンとの結婚に大反対したが、シューマンは長く執念を燃やし、やっとのことで結婚する。結婚後は7人の子供の母になり、しばし演奏活動を休止するが、シューマン精神疾患が発病してからは、また楽団の第一線に戻り、家計を支える為ピアノを弾き続けた。