セレフィカさんのこと

今日ここで私が書こうとしている文章は、誰がどう判断しても、くそったれなオノロケやら自慢話です。
ですから、その類の文章をうっかり読んで、腹が立ってしまいそうなアナタは、即刻このブラウザを閉じ、立ち去りましょう!




・・・さて、では、ちゃんと警告も発したので、遠慮なくはじめることにします(^^)




私は小学生の頃、クラスの中で、年がら年中受け持ちの先生に叱られていて、しかもそれを楽しんでさえいるような、ある男の子が好きでした。
彼は、非常に頭が良くて、言うことがイチイチ冴えているので、その点も、私にはたまらなく眩しく映っていました。


「初恋」の人…と言っていい、その彼は、たいして勉強をしていた様子もなかったのに、中学は全国的に有名な某男子校に進学し、それからは、まったく見かけることはなくなりました。
私は時々駅のホームで、彼の姿を探しましたが、ついに見つけることはできませんでした。
今から思えば、中学生の男の子って、ひと月見なくても大きく変貌していることがあるので、もし本人を見かけていたにしても、なかなか判別が付かなかったのかもしれません。


さて・・・高校生になった私は、相変わらず「ちょっと悪そうな」、その上「理屈っぽい」さらに「格好つけー」な男の子が好きでした。
私に対して、「おまえ、アホやな〜」とか、「おまえは性格が悪い」とか、二言目には暴言を吐くような、無礼な男の子が好きでした。


そんなある日、例の超有名男子校に行った彼が、「家出疾走した」・・・というウワサを聞きました。
もう半年も行方不明で、両親は半狂乱になっている・・・という話でした。
彼を知る人々は、「やっぱり、アタマ良過ぎると、いろいろ考えて変になるんじゃない?」などと言い合っていましたが、私には、彼の疾走が「アタマが良過ぎる」からなのかどうか、どうも分かりませんでした。
ただ一つ言えることは、それ以来、彼は私の中で、一つの「伝説」になりました。


大学生になった私は、いよいよもって、ろくでもない男ばかりが好きでした。
「理屈をこねる相手を、さらに理屈でもって侮蔑する」・・・のが基本姿勢の男とか、「理想は恐ろしく崇高なのに、暮らしぶりはただの卑怯者」・・・という男などなど、そんなのとばかり付き合っていました。




セレフィカさんが、私の前に現れたとき、私は、非常に警戒しました。


なぜなら、彼には、どこをどうさがしても、0.0001%ほどの「悪意」も感じられず、あまりに無垢な印象だったからです。


私は、長年の経験と嗜好から、こうした人間を信用していませんでした。
「コイツには、絶対、何かある。何かウラがある。そうでなきゃ、こんな『いい人』の皮をかぶってられるものか! コイツは、きっと詐欺師に違いない! 絶対にそうだ!」


セレフィカさんは、秀才です。
私なんか見たこともない、偏差値「85」なんて数値を、大学入試の数学模擬試験でたたき出したような人です。
でも、その「85」という偏差値ですら、彼には、あまり意味を持っていないようでした。


しばらく付き合ってみると、彼は、私がそれまで仲良くしていた男性とは、なにもかも違うタイプであることが分かってきました。


まず、彼には、「他人を侮蔑する」という思考回路が無い。
だから、「自分が侮蔑される」という発想も、無い・・・んです。


あ〜まったく、セレフィカさんときたら、ちゃんとすれば、まあまあ格好良く見えなくもないんです。
背はすらっと高いし、高校時代は「数学」の授業の次に「体育」が好きだったというだけあって、運動神経は優れているし、顔だって、マッキーにそっくりだし・・(・・・って、これは誉めてるんだよね? うん?)、そして、何より素晴らしいのは話す声の深くて柔らかい音色です。 いい声なんだよね、セレフィカさんは、本当に。


でも、そうした素材の良さを全く生かそうという気の無い、ダサすぎるファッション・センス(現在ではアキバ系と呼ぶようですが・・・)。
ちゃんと躾を受けましたか? 同じ地球で生きてましたよね?・・と尋ねずにはいられない、一般常識の欠落。
(一緒に暮らしだしたら、家事能力もほとんどないことが発覚!!!!!)




「たぶんぼくは、他人のことに関心がないんだと思う。他人のことは、どうでもいい人間なんだと思う。」
そう言いながら、彼は、私が会いたいといえば、どんなに忙しくても(たとえ大雪が降って交通機関が壊滅的に混乱していても)必ず来てくれ、別れ際になると、ものすごく寂しそうな顔をするんです。


だんだん私は、これまでに知っている男性のように、彼の言動には「ウラ」を読む必要がない、ということが分かってきました。
そして、それが心の底から心地よくなってきたんです。
彼が「寂しそうな顔」をするのは、「寂しい」からなんだ、そうなんだ! そのままなんだ!
なんて、いい生き方なんだろう!
「ちょっとワル」ぶって自分を守ろうともしない。
自分を守ることで、他人を傷つけることもない。
なんて、羨ましい人なんだろう!




・・・かくして、誰が見ても「不釣合い」に見えた私たちは、一緒に暮らし始めました。
誰もが、短期間での破局を予想していましたね〜
でも、どういうわけか、私たちは、現在に至るまで、けっこう長く続いてます(^^)




私は、あいかわらず、セレフィカさんを、どーしよーもなく「ダサイ男」だと思ってます。
外を連れて歩くには、かなり恥ずかしい・・・だって、ホント、野暮くささ500%なんだもん。
どんなに私が改造しようとしても、これが案外頑固で、全然言いなりにならないしね〜


でも、彼に会えて、私は、本当に幸せです。
彼に出会えてなかったら、私の人生は、今よりずっと悲惨でした。
しみじみ、感謝することばかりです。
ノロケてごめんよ〜〜〜 うははは〜〜)


そして、同時に最近は、あの高校生の時に家出疾走したという「初恋」の彼の、小学生時代の顔が、よく目に浮かびます。
彼は、今、どこで、どうしてるんだろうか?
彼は、家出疾走することで、何を手に入れたかったんだろうか?
・・・と、自問自答するのですが、やはり、そう簡単に答えは出ないんですよね・・・。