子供が憎い…という感情


あなたは、自分の子供に腹が立ち、憎しみが湧き上がり、「こんな子を生まなければ良かった」・・・と、思ったことはありますか?


私は、あります。
何度もあります。
そして、そんな風に私に思わせる我が子に対して、ますます怒りがこみ上げ、「この子さえいなかったら、私はこんな悪い感情を持つことも無かったのに…」と、自分を取り巻く不条理を思い、気が狂いそうになったことがあります。


こんな風に思う私は、母親として失格ですか?


「失格」だ・・・と、言いたい人は言って下さい。
どうぞ。



アスペルガー症候群の子供・・・と、ひとくちで言ってもいろいろなタイプの子がいますが、うちの息子には、その頑強な屁理屈、聞くに堪えない憎まれ口、自分勝手な行動・考え方など、とにかく「かわいくない」ところが山ほどあります。
しかも、こちらが一所懸命に彼のことを考え、必死で対応していることに、いっさい報いてくれません。
私の努力など、彼の「無神経」の前には、いつもいつも木っ端微塵に打ち砕かれます。
私は、まるでこの子の奴隷も同然です。


いったい私は、この子に前世で何をしたっていうのでしょうか?


時々思うんです。
この子は、もしかして、私に何か復讐をするために生まれてきたの?・・・と。
私を悲しませて、絶望させる為に生まれてきたの?・・・と。


「自分の子供に、そんな感情を持つなんて・・・」と、常識的な人は思うのでしょう。
私を「母親失格」だと言うのでしょう。


じゃあ、あなたがこの子を育ててみたらどうですか?
たぶん一日だって我慢が出来ないと思いますよ。
はらわたが煮えくり返るほどの暴言を吐かれて、信じられないような身勝手な態度を取られて、その上周囲にはそんな本人に代わってひたすら謝るよりなく、自尊心はズタズタにされ、情けなくて心はボロボロになり、力尽きそうになっても、でも、愛し続けようと思い、認めようと思い、受け入れ、育て、どうにかこうにか付き合っていくことが、あなたには出来ますか?




こんな葛藤を抱えながら、毎日を送っていると、なぜか「利他愛」という言葉が、胸の奥に響くのです。
「利他愛」ということが、どんなに難しくて、どんなに人間には高いハードルで、到底完全に実現することなど無理だ・・・と思えるから、だからこそ、「利他愛」という言葉が響くんです。


私は、自分の子供さえ、ときに激しく「憎い」・・・と思う一瞬が多々ある人間なんです。
こんな私には、「利他愛」の完全遂行など、とてもじゃないけど不可能です。
でも、それを「めざす」ことくらいはできるし、めざす自由もあるはずです。


「まずは自分を愛しましょう」という声もあるでしょう。
でも、たぶん私は、「利他愛」へとベクトルを向けていない自分を愛することは出来ないような気がします。
ですから、「自分を愛する」ためにも「利他愛」への志向は、私にとって必要なんです。
たとえ、それがどんなに不可能でも・・・




それにしても、なぜこんなに毎日葛藤だらけなんでしょうか・・・


私は、息子が可愛いです。
心の底から、誰よりも、彼の幸福を願ってます。
でも同時に、この子が憎らしくてたまらなくて、胸をかきむしりたくなることもあるんです。
その原因が自閉症の特性によることは解っているのに、それが認められない私がいます。
しかも、こうした自己を発見しているだけでも、まだなんとか私はマシなんじゃないか?・・・という自惚れもあるんですから困ったものだとも思います。


     (文責:ゆう)